技術コミュニティとの関わり方で注意していること

October 25, 2021

はじめに

企業と技術コミュニティ(ここでは主にソフトウェアエンジニアによるもの)との関わり方について最近考えることが多かったので、私個人が大切にしていることについてまとめたいと思います。なお、この記事に書いてあることは、あくまで@tenntenn個人が大切だと思っていることです。所属する企業や運営する技術コミュニティやカンファレンスの総意ではないことに注意してください。

企業が技術コミュニティ支援する理由

まずはじめに、企業が技術コミュニティを支援する理由について考えてみましょう。企業によってさまざまだと思いますが、以下のような理由が多いでしょう。

  • 技術領域自体の発展
  • 技術コミュニティの発展
  • 自社のエンジニア採用

どれも密接に関係しているため、切り離せるものではありません。技術領域が発展しないと、言語やライブラリの機能追加などが思うように行われないでしょうし、技術コミュニティが発展しないと知見が貯まりにくく、その技術が活用しづらくなってしまいます。もちろん、企業がその技術を導入し、職業として関わる人が増えることは技術領域や技術コミュニティの発展に寄与します。

企業のベネフィットに直接結びつくのは、やはり採用です。しかし、採用だけを目的にしてしまうと技術コミュニティがついてこれず、結果的に効果が薄くなってしまいます。技術コミュニティに参加する大部分のエンジニアは、技術についてやり取りがしたいと考えているため、採用だけを目的とすると興味を持ってもらえないからです。

採用に最も効くのは自社の技術力がよく分かるコンテンツ(セッション、ハンズオン、書籍、記事)を提供することでしょう。カンファレンスなどのスポンサーをすることで名前を知ってもらうと同時に、セッションで知見あふれる話をすると効果は絶大です(と思います)。私個人としてはGo Conference 2021 Springにおけるカンムさんの取り組みは、まさしくセッションと企業ブースをうまく使った事例かなと思いました。

なお、メルペイ エキスパートチームが考える技術コミュニティとの関わり方については、Merpay Tech Fest 2021でお話しました。企業と社員、そして技術コミュニティがwin-win-winの関係になる取り組みを行っています。

企業と技術コミュニティの関わり方

次に企業として技術コミュニティを支援する上で私が大切に考えていることについて紹介します。

技術コミュニティの運営は基本的には無給でかつ業務時間外で行うことが多いでしょう(私は業務時間内にやってます)。一方、企業側は業務時間内にやり取りをするため、仕事と同じような対応を技術コミュニティに求めてしまいがちです。

例えば、

  • 頻繁に問い合わせる
  • 期限内の回答や対応を求める
  • 個別対応を求める
  • 質を追求する
  • 圧力をかける(仕事でもアウトですが)

などがあります。

このような形で接すると、技術コミュニティ側は支援してもらってる立場であるため、強くは出れず頑張って対応してしまい、運営メンバーのモチベーションが下がってしまう恐れがあります。運営メンバーのモチベーションが下がってしまうと勉強会やカンファレンスの開催も危ぶまれます。

企業側もカンファレンスのスポンサー費用を支払ったり、社員の稼働を技術コミュニティに充てているため、ある程度のベネフィットは得るべきだとは思いますが、過剰に対応を求めるのは技術コミュニティの存続を脅かすことに繋がります。

そのため、私は技術コミュニティとの関わり方で以下のようなことを大切にしています。

  • 運営メンバーのモチベーションを大切にする
  • 技術コミュニティに関わる人が技術的に楽しいと思えるようにする
  • ボランティアベースによる運営だと言うことを忘れない
  • 他の規模の異なる技術コミュニティやカンファレンスと比べない
  • スポンサーの立場を利用して圧力をかけない
  • 参加者のためという形で運営メンバーの負荷を高めない
  • 自社だけが得する形を選ばず、他社にも配慮する
  • 公開情報以上の情報を執拗に問い合わせない

特にモチベーションは一度失われてしまうとなかなか戻ってきません。そもそも、技術コミュニティの運営にはそれなりの熱量と稼働が必要です。そう簡単には代わりになる人は見つかりません。運営をヨイショすればいいとは思いませんが、節度を守った関係がベストだと思います。

圧力については、結構昔になりますが、「xxxしてくれないと支援できませんよ」のような、私個人に対して圧力とも取れる発言(先方はきっと冗談のつもりだったでしょうが)を掛けられた経験があります。ここでは詳細は述べませんが、私はその経験から自分が企業側になった時に、そうならないように注意しています。距離感を間違えないようにしなければいけません。

おわりに

この記事では企業として技術コミュニティに関わる際に、@tenntennが大切だなと思っていることについて紹介しました。エンジニアの採用が激化している中、今後も技術コミュニティへの支援を検討している企業が増えると思います。そういう企業の担当者の方が一歩立ち止まって、技術コミュニティとの関わり方について考える機会になれば光栄です。

再掲ですが、この記事に書いてあることは、あくまで@tenntenn個人が大切だと思っていることです。所属する企業や運営する技術コミュニティやカンファレンスの総意ではないことに注意してください。